2022年9月に米国デトロイトで開催された「Automotive Logistics and Supply Chain Conference」から帰国したところです。この年次イベントでは、急速に変化する環境の中で、サプライチェーンマネジメントとロジスティクの成功の秘訣について探求しており、私は、そこで学び、参加者と前向きなディスカッションをすることができました。

ここでは、私が参加した多くの講演から、5つの重要な気づきについてご紹介します。

  1. 3PL/4PL社内内製化によるサプライチェーンの回復力向上 – ネットワーク全体の渋滞、労働力不足、輸送の遅延、容量制限、港湾での搬送滞留、コスト圧力などから、自動車メーカーが高い回復力を持つサプライチェーンを必要としていることは明らかです。物流業者との戦略的で協力的な関係の改善、輸送や倉庫のコスト削減、物流業務をよりコントロールするため、3PL/4PLの内製化は、サプライチェーンの回復力を高めるための戦略のひとつといえます。
  2. ネットワークの可視化 – 混乱の規模や頻度が増加し、COVID-19、半導体不足、ウクライナ紛争などが「ニューノーマル」となっています。自動車産業は、ディーラー、OEM(相手先ブランド製造)、複数階層のサプライヤー、3PL(第三者物流業者)で構成される複雑なエコシステムのため、Tier2やTier3の半導体ウェハー製造など、1つのノードに障害が発生すると、ネットワーク全体に影響を及ぼす可能性があります。そのため、Tier1、Tier2、Tier3のサプライヤー、OEM、物流サービスプロバイダー、ディーラーまでを含むエコシステム全体を完全に可視化することが重要です。混乱をできるだけ早く察知し、予測することで、企業は先手を打ったリスク軽減戦略を策定し、保険料負担を下げることができます。短期的なPO(発注情報)やASN(事前出荷情報)レベルの可視化だけでは不十分です。OEMやTier1サプライヤーは、Tier-nサプライヤーとの長期的な予測や業務対応の連携を検討すべきです。
  3. 調達、計画、物流間のサイロ化の解消 – サイロ化したサプライチェーンは、遅延、応答性の欠如、過剰在庫などの大きな非効率性をもたらし、昨今は、顧客の期待の高まりと変動の増大によってさらに悪化しています。このような不確実性、複雑性、変動性に直面している自動車メーカーは、需要実現と供給中断のシナリオに基づく様々な「what-if」シミュレーションと緊急時対応策を作成する必要があります。
  4. インフレへの対応 – 40年振りの高水準にあるインフレの中で、自動車部品メーカーは、一方では材料費の上昇、サプライチェーンの混乱、輸送コストの上昇、他方では需要構成の変化に苦戦しています。これは、EBITDA(金利、税金、減価償却前利益)マージンに大きな影響を及ぼしています。これに対応するため、CSCO(最高サプライチェーン責任者)は在庫削減、業務効率の改善、コスト管理、運転資金の削減、キャッシュフローの保全など、サプライチェーンの改善策を打ち出しています。
  5. サプライチェーン人材の育成 – サプライチェーンが複雑になるにつれ、仕事の役割やスキル要件も進化し、自動車業界は優秀な人材を獲得し維持するための激しい競争にさらされています。プランナーが単なる 「Excelエキスパート」ではなく、サプライヤーと顧客の協業やwhat-ifシナリオ策定などの、より付加価値の高い活動を行うことで、仕事の満足度を向上させることができます。包括的で多様な労働力を創出することは、サプライチェーンのパフォーマンスを向上し、創造的で生産的な職場環境を育成し、トラックドライバーから役員に至るまで、バリューチェーン全体の労働力不足に対処するために不可欠です。

上記の気づきに加え、多くの業界リーダーに会い、学ぶことができたのは素晴らしいことでした。Kelly Bysouth(IACグループ、チーフ・サプライチェーン・オフィサー)、Steve Brown(トヨタ部品サプライチェーン担当副社長)、Chris Styles(日産サプライチェーンマネジメント担当副社長)、Bridget Grewal(MAGNA)、Greg Megerian(Adient、物流担当ディレクター)、Edgard Pezzo(GM、グローバル物流およびコンテナ担当エグゼクティブ・ディレクター)。そして、私のお気に入りのパネルディスカッションは、Kelly Bysouth(IACグループのチーフ・サプライチェーン・オフィサー)、Kathy Crawley(アマゾンの輸送担当ゼネラルマネージャー)、Mauryo Jones(Ryderの安全衛生・セキュリティVP)、Jennifer Sarah Bolton(北米日産サプライチェーンマネジメントディレクター)の「潜在能力の最大化-自動車のサプライチェーンにおける女性と多様性」でした。

来年のカンファレンスでは、皆様とお会いできるのを楽しみにしています。それまでに、Blue Yonderが、Adient、Yazaki、Cummins Meritor、Mahindra&Mahindra、Mercedes Benz USA、Renault、Ford、Bridgestone、Michelinなどの自動車製造業のお客様に対して、輸送費の削減、業務効率の改善、スループットの向上、運転資本金の削減、プランナーの生産性の向上など、サプライチェーンの変革にどのように貢献しているかをご覧ください。


筆者のSalim Shaikh(CPIM、CSCP)は、Blue Yonderのデジタルトランスフォーメーション担当エグゼクティブです。顧客がベストプラクティスの戦略とプロセスを導入し、ビジネス価値と財務的利益の促進をご支援する、広く認知された信頼できるアドバイザーです。